2011/02/27

教育CSRシンポジウムに出席しました。

東京3日目、有意義な時間を過ごしております。

さて、今日は株式会社リバネスが主催する「教育CSRシンポジウム」に参加してきました。もちろんインターンシップでもお世話になっているリバネスですが、去年辺りからこのシンポジウムを開催しているようです。かなり面白い話が聞けたので、掻い摘んで内容をお届けします。



このシンポジウムでは6人の講演者、報告者の方々のお話を伺うことができました。


<小原さん>
経済産業省 産業技術環境局 大学連携推進課 産業技術人材企画調整官

直前の用事で途中からの参加になってしまいましたが、お話の最後にあったのは「科学技術を取り巻く負のスパイラルを正のスパイラルに変える」ことの重要性でした。現状では、学校の授業と社会のつながりがうまくいかない→人材が育たない→産業の衰退→学校で理科を教える意義低下→・・・と負のスパイラルに陥る可能性があります。これを正のスパイラルに変えることによって、産業が活発になり雇用を生み出し、科学技術の活性化につながります。というおはなしでした。


<東畑さん>
松戸市教育委員会 生涯学習本部 学校教育担当部 指導課 指導主事

この方のお話は非常に面白かったです。何かっていうと、「企業による実験教室を受け入れた教員の意見」「キャリア教育の必要性」という、普段は聞けない教員側の立場での意見を伺うことができたことです。実験教室を終えた教員側の感想として、意外にも「子供たちが楽しむことができた」以外に「教員自身も勉強になった」という意見があったそうです。確かに、先生方の間でも教科指導についての勉強会や研修会は活発に行われているのは僕もよく聞きます。しかし、教職者以外のやり方というのは非常に新鮮である、という意味なのでしょう。また、「現場の研究社員と触れ合うことがキャリア教育につながる」ことも、非常に貴重な意見(普段は聞けないという意味で)だったと思います。


企業実施例「企業オリジナル実験教室の開発と実施」
*実際に学校で実験教室を企画することになった企業の事例を2つ取り上げていました。

<古賀さん>
マルハニチロホールディングス 中央研究所

子供たちに科学の面白さ、生き物の不思議を知ってもらうだけではなく、企画側の意図として命の大切さを伝えようとした、という2方面からの目標を設定していました。これにより、長期的な支店で企業価値を向上することができると考えられるようです。また、実験教室の取り組みというものは、単に実験教室を行うだけではなく社員教育の一環としても役に立つというご意見でした。普段は手が回らない、研究の根本的な部分や会社の理念について改めて認識し定着することが可能だと感じられたようです。同時に、「継続性」についても他の講演者の方よりも一倍大きくお話されていました。ただ続けるだけでは位置づけが不明確であり、社内認知も上げていかないと担当者のモチベーションも上がらず衰退の危険性があるとおっしゃっていました。そのためにも、会社位の取り組みとして利益につながるものとして位置づけ、研究所以外も巻き込んで「実験教室は社員の誇り」というところまで持っていく必要があるとのことでした。


<柳原さん>
インテル株式会社

インテルはすでに教育CSRのような活動を行っています。今の社会には3E=Education, Entrepreneur, Employmentのステップが必要であり、その根幹となる教育に力をいれるべきであると考えているようです。実際に行なっている取り組みについては割愛いたしますが、現場の社員が学校に出向くという点と、社員研修として有効であったという点において今回の取り組みは重要であったとおっしゃっています。


<世良先生>
東京電機大学工学部人間科学系列 准教授

この方のお話も興味深かったです。Cause Related Marketing(CRM)という新しいマーケティング法についてのお話でした。そのまま引用しますと、
CRMとは、組織がコーズ支援を行い、それをコミュニケーションすることによりマーケティング全般の目標達成を行う
ことです。図で書くと下のようになります。

マーケティングと、いわゆるCSRが重なるところがCRMになるようです。具体例は割愛して、なぜ今CSRでなくてCRMになのか。次の図を見てください。企業の社会貢献度を、企業活動別に比較したものです。
①通常の企業活動
本業による社会貢献と、本業によって得られた利益から納税することによる社会貢献が可能です。
②通常の企業活動+(CSRのうちの)フィランソロフィー
フィランソロフィーによる社会貢献が上積みされますが、そこに要した分だけコストがかかり利益が減ります。結果として利益からの納税による社会貢献は下がります。
③通常の企業活動+フィランソロフィー+CRM
利益を得る目的で社会貢献活動を行った場合がCRMになります。CRMが成功すれば本業の売上が上昇、利益も増加、よってそれぞれによる社会貢献が上積みされます。

こうしてみると、企業が何も利益を得ないままに社会貢献活動を行うより、利益を目的として社会貢献活動を行ったほうが結果的に貢献度は大きくなります。日本では社会貢献に利益が伴うことは、未だすんなりと受け入れられる状態ではありませんが、この理論をバックに、消費者に分かりやすく(あるいは気づかないところで)CRMを推し進められるといいかなと思います。最後のは僕の意見です。

また、注意点として2つ挙げられていました。ひとつは、消費者に売上と利益の区別が付いていないこと。「売上の0.01%が寄付されます」「利益の0.01%が寄付されます」の2つは、普通に考えて全く額は異なりますが、パッケージに書かれている言葉としては消費者に対する影響がほぼ同じである、となります。逆に、寄付額が同じであれば当然利益を基準にしたほうがその割合は大きくなりますので、企業としては利益を基準に表記したほうがいいということです。また、「ブランド戦略は命がけ」です。うまく行けば企業ブランドを向上させることができますが、失敗すると逆に下げることになってしまうのがブランド戦略の怖いところです。CRMを行う際にはこの2点に注意して行うといいようです。


<丸さん>
株式会社リバネス 代表取締役 CEO

ひとつだけ書きます。「これまでの答えの分かっている実験教室に加え、答えのわからない課題解決型実験教室を行う」です。企業の方が学校で活躍する土壌は揃いました。



シンポジウム全体を通して課題に上がっていたのが「継続」です。主にお金とコーディネーターの話になるのですが、今回参画していた企業の中には、経産省の事業を離れたあとも自分の財源で実験教室の取り組みを続けて行ったり、また、リバネスもおそらく引き続きコーディネーターを務めると思いますので、当面は継続していけそうな印象を受けました。企業、学校、コーディネーターがそれぞれ得する、win-win-winの関係を作り続けていくことが、継続していける要因なのだと思います。今回についても3社のwinは保たれていたと思います。

毎度のことながら長々と書いてしまいましたが、このあたりで。

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